わのじょおうひみここう |
倭女王卑弥呼考 |
冒頭文
倭人の名は『山海經』・『漢書』・『論衡』等の古書に散見すれども、其記事何れも簡單にして、之に因りては未だ上代に於ける倭國の状態を窺ふに足らず。然るに獨り『魏志』の倭人傳に至りては、倭國の事を敍すること頗る詳密にして、而も傳中の主人公たる卑彌呼女王の人物は、赫灼として紙上に輝き、讀者をして恰も暗黒の裡に光明を認むるが如き感あらしむ。『魏志』は晉の陳壽の編纂に成れりと雖も、其東夷傳は主として魏の魚豢の
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「東亞之光 第五卷第六・七號」1910(明治43)年6、7月
底本
- 白鳥庫吉全集 第一卷 日本上代史研究 上
- 岩波書店
- 1969(昭和44)年12月8日