していとしんぶんはいたつ
姉弟と新聞配達

冒頭文

一 早春の夕暮だつた。郊外の小ぢんまりした路角(みちかど)の家の茶の間で、赤ん坊はうつら〳〵眠(ね)かゝつてゐる。二十一になる細君は、ソツと用心深く取上げて、静かな二階に眠かさうと、階子段(はしごだん)を上つて行つた。いつも細君は、この夕方の寝かしつける役目を、実家から女中払底の手助けに来てゐるAさんといふ若い看護婦さんに頼んで、自分は料理方にまはるのだが、今夜はAさんに、何か国に宛(あ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮」1923(大正12)年1月

底本

  • 現代日本文學大系 62
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年4月24日