なんきんろくがつさい
南京六月祭

冒頭文

ひどく東邦風なジャンクを模様にした切手を四枚も貼(は)つて——北京(ペキン)から私のところへ小包が来た。差出人は満鉄公処秘書課塩崎龍夫、塩崎は私の旧友なのだ。副業ともいふべき支那語がうまいので、それに支那の生活が味はひたさに満鉄に入つて、副社長付の通訳をしてゐるのだ。 それは兎(と)も角(かく)として、包みをほどくと箱のなかから紫に染めあげた支那絹の袱紗(ふくさ)が出て来た。さう云へば塩崎の長

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸春秋」1928(昭和3)年10月

底本

  • 現代日本文學大系 62 牧野信一 稻垣足穗 十一谷義三郎 犬養健 中河與一 今東光集
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年4月24日