せいどうのキリスト ――いちめいなんばんいものしのし
青銅の基督 ――一名南蛮鋳物師の死

冒頭文

一 父秀忠と祖父家康の素志を継いで、一つにはまだ徳川の天下が織田や豊臣のやうに栄枯盛衰の例に洩れず、一時的で、三代目あたりからそろ〳〵くづれ出すのではないかと云ふ諸侯の肝を冷やす為めに、又自分自らも内心実はその危険を少からず感じてゐた処から、さし当り切支丹(きりしたん)を槍玉に挙げて、凡そ残虐の限りを尽した家光が死んで家綱が四代将軍となつてゐた頃の事である。 実際、無抵抗な切支

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本文學大系 36 長與善郎・野上彌生子集
  • 筑摩書房
  • 1971(昭和46)年2月25日