ひゃくまんにんのそしてただひとりのぶんがく
百万人のそして唯一人の文学

冒頭文

純小説と通俗小説の限界が、戦後いよいよ曖昧(あいまい)になつて来た。これは日本に限つた現象ではないらしい。この現象は、いろいろな意味にとられるが、根本的には、純小説をしつかり支(ささ)へてゐた個人主義、ないしは個人性が、それだけ崩(くづ)れてきたのだとみられる。そしてそれだけ、小説がジャーナリスチックになり、ジャーナリズムに征服されたのだとみられる。 昨年のことだが、わたしは妙な経験をし

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本文學大系 54 片上伸 平林初之輔 青野季吉 宮本顯治 藏原惟人集
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年1月20日