てらまち
寺町

冒頭文

樹の多い山の手の初夏の景色ほど美しいものはない。始めは樹々の若芽が、黒々とした枝の上に緑の点を打って、遠く見ると匂いやかに煙って居るが、その細かい点が日ごとに大きくなって、やがて一刷毛(はけ)、黄の勝った一団の緑となるまで、日々微妙な変化を示しながら、色の深さを増して行くのは、朝晩眺め尽しても飽きない景色である。 五月の日に光るかなめの若葉、柿の若葉。読我書屋の狭い庭から、段々遠い林に眼

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆90 道
  • 作品社
  • 1990(平成2)年4月25日