こがらし ――みなみえきよじょう――
こがらし ――南駅余情――

冒頭文

こがらし、筑波おろし、そういう言葉を明治中期の東京の少年達は早くから知って居た。そうして其の言葉を、自分達の書くものの中などにも使って居た。それは寒さが今よりも早く来たし、衣料も今のように温い毛の物などが無く、風がひどく身に沁(し)みて、始終人がそういう言葉を口にしたからであった。十一月三日という日は何時も霜が深く、時にはみぞれが小雪になるような日さえあった。子供達は大抵紀州ネルのシャツを着ていて

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆37 風
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年11月25日