かしのふ
菓子の譜

冒頭文

いま生きて居れば、すくなくとも百ちかい年の人であらう。或は百を踰(こ)える年なのかも知れない。明治時代の海軍の軍医である。その頃の軍艦といふものは、厳(いか)めしくはあるが同時に美しいもので、それはただ平和を保障する象徴のやうな時代であつた。ふねも小さく、たかだか二三千噸のものが大きい方で、到るところの小さい港まで訪問して、人民たちに敬はれ、喜ばれ、珍しがられ、愛された時代であった。 そ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆54 菓
  • 作品社
  • 1987(昭和62)年4月25日