あめのやど
雨の宿

冒頭文

久し振りで京都の秋を観ようと、十月十五日の朝東京駅を発つ時、偶然会った山内義雄さんから、お宿はと聞かれて、実は志す家はあるが通知もしてないことをいうと、それでは万一の場合にと、名刺に書き添えた紹介を下すったが、それは鴨川に近い三本木という、かねて私もひそかに見当をつけたことのある静かな佳い場所であった。然し実際私の落ちついたのは、中京(なかぎょう)も淋しい位静かな町筋の、暗く奥深い呉服屋や、古い扇

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆43 雨
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年5月25日