しちやのこぞう
質屋の小僧

冒頭文

私がどんなに質屋の世話になつたかといふ事は、これまで、小説に、随筆に、既にしばしば書いたことである。だが、私だとても、あの暖簾を単独でくぐるやうになる迄には、余程の決心を要した。私が友人を介して質屋の世話になり始めてから、友人なしに私一人でそこの敷居をまたぐやうになつた迄には、少なくとも二年の月日がかかつた。 それは私が二十四歳の秋の末のことであつた。その秋の初の頃、私の出世を待ち兼ねて

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻18 質屋
  • 作品社
  • 1992(平成4)年8月25日