わしのび
和紙の美

冒頭文

想へば単純な材料に過ぎない。それなのに眺めてゐて惹きつけられる。手漉きの和紙はいつだとて魅力に満ちる。私はそれを見つめ、それに手を触れ、言ひ難い満足を覚える。美しければ美しいほど、かりそめには使ひ難い。余ほどの名筆ででもなくば、紙を穢すことにならう。そのまゝでもう立派なのである。考へると不思議ではないか、只の料紙なのである。だが無地であるから、尚美しさに含みが宿るのだとも云へよう。良き紙は良き夢を

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆68 紙
  • 作品社
  • 1988(昭和63)年6月25日