一 「紙漉重宝記」の絵語りの終りに、忘れ難い一図が差し入れてある。一枚の紙が風にひら〳〵と遙かに飛んで行くのを、人が追ひかけて拾はうとする図である。貴い紙を一枚でもおろそかにしてはすまないと云ふ意を込めたのである。絵にとり立てゝ美しさはないが、この一図を忘れずに加へたその心には美しさが濃い。物体ないと云ふ気持が溢れてゐるからである。どの本であつたか、紙に就いて神明を畏(おそ)るべしと云ふ意味の句が