もののいえないもの
もののいえないもの

冒頭文

敏(とし)ちゃんは、なんだかしんぱいそうな顔(かお)つきをして、だまっています。 「どうしたの?」と、姉(ねえ)さんがきいてもだまっています。「おかしいわ。いつも元気(げんき)なのに、けんかをしてきたんでしょう。」「ばか。だれがけんかなんかするものか。」「じゃ、どうしたの?」「なんでもないのだよ。」 敏(とし)ちゃんは、あちらへいってしまいました。そしてまた、考(かんが)えていたのです。それには

文字遣い

新字新仮名

初出

「大毎コドモ」1934(昭和9)年10月

底本

  • 定本小川未明童話全集 10
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年8月10日