てふうきん
手風琴

冒頭文

秋風(あきかぜ)が吹(ふ)きはじめると、高原(こうげん)の別荘(べっそう)にきていた都(みやこ)の人(ひと)たちは、あわただしく逃(に)げるように街(まち)へ帰(かえ)ってゆきました。そのあたりには、もはや人影(ひとかげ)が見(み)えなかったのであります。 ひとり、村(むら)をはなれて、山(やま)の小舎(こや)で寝起(ねお)きをして、木(き)をきり、炭(すみ)をたいていた治助(じすけ)じ

文字遣い

新字新仮名

初出

「民政」1933(昭和8)年9月

底本

  • 定本小川未明童話全集 10
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年8月10日