れんあいきょうふびょう(にば)
恋愛恐怖病(二場)

冒頭文

第一場 静かな海を見下ろす小高い砂丘の上 日没前後 男と女とが、向うむきに、脚を投げ出して坐つてゐる。「なんでもない同志」の間隔が、それとなく保たれてゐなければならない。 やゝ長い間 男  あアあ。南京豆が食ひたくなつた。 女  南京豆……? それより、あれ御覧なさい、靄がだんだんこつちへ来てよ。 男  靄は毒ぢやないでせう。これやいかん、尻がつべたい。僕は何時の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「改造 第八巻第十号」1925(大正15)年9月1日

底本

  • 岸田國士全集1
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年11月8日