さんがつのそらのした
三月の空の下

冒頭文

花(はな)の咲(さ)く前(まえ)には、とかく、寒(さむ)かったり、暖(あたた)かかったりして天候(てんこう)の定(さだ)まらぬものです。 その日(ひ)も暮(く)れ方(がた)まで穏(おだ)やかだったのが夜(よる)に入(はい)ると、急(きゅう)に風(かぜ)が出(で)はじめました。 ちょうど、悪寒(おかん)に襲(おそ)われた患者(かんじゃ)のように、常磐木(ときわぎ)は、その黒(くろ

文字遣い

新字新仮名

初出

「民政」1934(昭和9)年3月

底本

  • 定本小川未明童話全集 10
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年8月10日