ふしぎなしま
不思議な島

冒頭文

僕は籐(とう)の長椅子(ながいす)にぼんやり横になっている。目の前に欄干(らんかん)のあるところをみると、どうも船の甲板(かんぱん)らしい。欄干の向うには灰色の浪(なみ)に飛び魚か何か閃(ひらめ)いている。が、何のために船へ乗ったか、不思議にもそれは覚えていない。つれがあるのか、一人なのか、その辺(へん)も同じように曖昧(あいまい)である。 曖昧と云えば浪の向うも靄(もや)のおりているせ

文字遣い

新字新仮名

初出

「随筆」1924(大正13)年1月

底本

  • 芥川龍之介全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年2月24日