にぎりめし
にぎり飯

冒頭文

深川古石場町の警防団員であつた荒物屋の佐藤は三月九日夜半の空襲に、やつとのこと火の中を葛西橋近くまで逃げ延び、頭巾の間から真赤になつた眼をしばだゝきながらも、放水路堤防の草の色と水の流を見て、初(はじめ)て生命拾(いのちびろ)ひをしたことを確めた。 然しどこをどう逃げ迷つて来たのか、さつぱり見当がつかない。逃げ迷つて行く道すがら人なだれの中に、子供をおぶつた女房の姿を見失ひ、声をかぎりに

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • ふるさと文学館 第一三巻 【千葉】
  • ぎょうせい
  • 1994(平成6)年11月15日