あぶらじごく |
| 油地獄 |
冒頭文
一 大丈夫まさに雄飛すべしと、入(い)らざる智慧を趙温(ちょうおん)に附けられたおかげには、鋤(すき)だの鍬(くわ)だの見るも賤しい心地がせられ、水盃をも仕兼ねない父母の手許(てもと)を離れて、玉でもないものを東京へ琢磨(みが)きに出た当座は、定めて気に食わぬ五大洲を改造するぐらいの画策もあったろうが、一年が二年二年が三年と馴れるに随って、金から吹起る都の腐れ風に日向臭い横顔をだん〳〵かすられ、
文字遣い
新字新仮名
初出
「国会新聞」1891(明治24)年
底本
- 日本短篇文学全集 第9巻
- 筑摩書房
- 1969(昭和44)年6月5日