ほうめいごぶさく 03 ほうろう
泡鳴五部作 03 放浪

冒頭文

一 樺太で自分の力に餘る不慣れな事業をして、その着手前に友人どもから危ぶまれた通り、まんまと失敗し、殆ど文なしの身になつて、逃げるが如くこそ〳〵と北海道まで歸つて來た田村義雄だ。 小樽直行の汽船へマオカから乘り込んだ時、義雄の知つてゐる料理屋の主人やおかみや、藝者も多く、艀(はしけ)で本船まで同乘してやつて來たのは來たが、それは大抵自分を見送つて呉れるのが主ではなく、二三名の鰊漁者(にしんれ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「放浪」東雲堂、1910(明治43)年7月

底本

  • 泡鳴五部作 下巻
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1955(昭和30)年7月25日