ラスキンのことば
ラスキンの言葉

冒頭文

もう昔となった。その頃、雑司ヶ谷の墓地を散歩した時分に、歩みを行路病者の墓の前にとゞめて、瞑想したのである。名も知れない人の小さな墓標が、夏草の繁った一隅に、朽ちかゝった頭を見せていた。あたりは、終日、しめっぽく、虫が細々とした声で鳴いている。そして、たゞ、こゝにも世上の喧轟を他にして、月日が流れていることを思わせたのであった。 思うに、ある年のある日、旅人は、夕日に彩られた街を喘(あえ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 芸術は生動す
  • 国文社
  • 1982(昭和57)年3月30日