なもなきくさ
名もなき草

冒頭文

名も知らない草に咲く、一茎の花は、無条件に美しいものである。日の光りに照らされて、鮮紅に、心臓のごとく戦(おのの)くのを見ても、また微風に吹かれて、羞(はじ)らうごとく揺らぐのを見ても、かぎりない、美しさがその中に見出されるであろう。 思うに、見出そうとすれば、美は、この地上のどんなところにも存在する。たゞ見る人が謙虚にして、それに対して考うるだけの至誠があれば足りるものだ。凡そ、そこに

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 芸術は生動す
  • 国文社
  • 1982(昭和57)年3月30日