わすれられたるかんじょう
忘れられたる感情

冒頭文

もはや記憶から、消えてしまった子供の時分の感情がある。また、或時分に、ある事件によって、自分の心を占領したことのあった、忘れられた感覚がある。また、偶然にふら〳〵と頭の中に顔を出して、はっと思ってその気分を意識しようとする刹那には、もう、其の顔が隠れてしまって、たゞ、単調な連続的の感情に頭が占領せられているのを意識するばかりである。 これを要するに、たゞ、吾等には、幾何(いくばく)の忘れ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 芸術は生動す
  • 国文社
  • 1982(昭和57)年3月30日