あるひのごご
ある日の午後

冒頭文

新に越して来た家の前に二軒続きの長屋があった。最初私にはただこんな長屋があるという位にしか思われなかった。 ある新聞社にいる知人から毎日寄贈してくれる新聞がこの越して来てから二三日(ち)届かなかったので、私はきっと配達人が此家(ここ)が分らない為であろうと思った。しかし私には無代価で送ってもらっているということが、わざ〳〵ハガキを本社に出して転居を報ずるのを差し控えさせた。何となればそう

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 芸術は生動す
  • 国文社
  • 1982(昭和57)年3月30日