ついほうされて
追放されて

冒頭文

『先生』と綽名(あだな)のついた老人のセミョーンと、誰も名を知らない若い韃靼(ダッタン)人が、川岸の焚火の傍に坐っていた。残る三人の渡船夫は小屋のなかにいる。セミョーンは六十ほどの老爺で、痩せて歯はもう一本もないが、肩幅が広くて一見まだ矍鑠(かくしゃく)としている。彼は酔っていた。もう夙(とう)から寝たくてならないのだが、ポケットには酒瓶があるし、小屋の若者達にヴォトカをねだられるのも厭だった。韃

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • チェーホフ全集 9
  • 中央公論社
  • 1960(昭和35)年4月15日初版発行、1980(昭和55)年9月20日再訂再版