こにあたう
子に与ふ

冒頭文

遺書 大輝よ、此の経典は汝の知る如く父の刑死する迄、読誦せるものなり。 汝の生るると符節を合する如く、突然として父は霊魂を見、神仏を見、此の法華経を誦持するに至れるなり。 即ち汝の生るるとより、父の臨終まで読誦せられたる至重至尊の経典なり。父は只此法華経をのみ汝に残す。父の想ひ出さるる時、父の恋しき時、汝の行路に於て悲しき時、迷へる時、怨み怒り悩む時、又楽しき嬉しき時、此

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻17 遺言
  • 作品社
  • 1992(平成4)年7月25日