はるかぜのふくまち
春風の吹く町

冒頭文

金(きん)さんは、幼(おさな)い時分(じぶん)から、親方(おやかた)に育(そだ)てられて、両親(りょうしん)を知(し)りませんでした。らんの花(はな)の香(かお)る南(みなみ)の支那(しな)の町(まち)を、歩(ある)きまわって、日本(にっぽん)へ渡(わた)ってきたのは、十二、三のころでした。街(まち)はずれの空(あ)き地(ち)で、黒(くろ)い支那服(しなふく)を着(き)た親方(おやかた)は、太(ふ

文字遣い

新字新仮名

初出

「台湾日日新報 夕刊」1940(昭和15)年4月7日

底本

  • 定本小川未明童話全集 12
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年10月10日