なみあらくとも
波荒くとも

冒頭文

一 鉛色(なまりいろ)をした、冬(ふゆ)の朝(あさ)でした。往来(おうらい)には、まだあまり人通(ひとどお)りがなかったのです。広(ひろ)い路(みち)の中央(ちゅうおう)を電車(でんしゃ)だけが、潮(うしお)の押(お)しよせるようなうなり声(ごえ)をたて、うす暗(ぐら)いうちから往復(おうふく)していました。そして、コンクリート造(づく)りの建物(たてもの)の多(おお)い町(まち)の中(なか)は

文字遣い

新字新仮名

初出

「小学五年生」1939(昭和14)年3月

底本

  • 定本小川未明童話全集 12
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年10月10日