たにまのしじゅうから
谷間のしじゅうから

冒頭文

春(はる)のころ、一度(ど)この谷間(たにま)を訪(おとず)れたことのあるしじゅうからは、やがて涼風(すずかぜ)のたとうとする今日(きょう)、谷川(たにがわ)の岸(きし)にあった同(おな)じ石(いし)の上(うえ)に降(お)りて、なつかしそうに、あたりの景色(けしき)をながめていたのであります。 小鳥(ことり)たちにとって、この二、三か月(げつ)の間(あいだ)は、かなり長(なが)い間(あいだ)の

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥 鈴木三重吉追悼号」1936(昭和11)年10月

底本

  • 定本小川未明童話全集 12
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年10月10日