かぜはささやく
風はささやく

冒頭文

高窓(たかまど)の障子(しょうじ)の破(やぶ)れ穴(あな)に、風(かぜ)があたると、ブー、ブーといって、鳴(な)りました。もう冬(ふゆ)が近(ちか)づいていたので、いつも空(そら)は暗(くら)かったのです。まだ幼年(ようねん)の彼(かれ)は、この音(おと)をはるかの荒(あら)い北海(ほっかい)をいく、汽船(きせん)の笛(ふえ)とも聞(き)きました。家(いえ)から外(そと)へ飛(と)び出(だ)して、

文字遣い

新字新仮名

初出

「人民戦線」1946(昭和21)年5月号

底本

  • 定本小川未明童話全集 13
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年11月10日