うずめられたかがみ
うずめられた鏡

冒頭文

後(のち)になってから、烏帽子岳(えぼしだけ)という名(な)がついたけれど、むかしは、ただ三角形(かくがた)の山(やま)としか、知(し)られていませんでした。山(やま)がはじめて、地上(ちじょう)に生(う)まれたとき、あたりは、荒涼(こうりょう)として、なにも、目(め)にとまるものがなかったのです。 そのとき、はるか北(きた)の方(ほう)に、紫色(むらさきいろ)の光(ひか)る海(うみ)が見(み

文字遣い

新字新仮名

初出

「女学生の友」1953(昭和28)年8月

底本

  • 定本小川未明童話全集 14
  • 講談社
  • 1977(昭和52)年12月10日