こくみんせいとぶんがく |
国民性と文学 |
冒頭文
今日の文学、就中(なかんづく)小説に対する世間の要求の主なるものを挙(あ)ぐれば、現社会に密接して時事時潮を描けるといふもの其(そ)の一にして、国民性を描写して国民的性情の満足を与へよといふもの其の二なり。前者は姑(しばら)く措(お)く、後者の要求に対しては吾人(ごじん)頗(すこぶ)る惑ふ。則(すなは)ち問うて曰(い)はく、国民性とは何ぞや、国民的性情の満足とは何ぞや、そも〳〵又此(こ)の要求に是
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 現代日本文學大系 96 文藝評論集
- 筑摩書房
- 1973(昭和48)年7月10日