じつぶつともけい
実物と模型

冒頭文

人間の手を直に型にとつた石膏で造り上げたものを見た。しかし、どういふわけかそれは少しも生きた感じを与へなかつた。却つて芸術家の眼で見た人間の手の印象を元として造つたものゝ方がより多く私達に生きた手を感じさせるのである。 私は嘗て或腕のすぐれた工匠が幾十年といふ永い間の苦心によつて造り上げたといふ日光東照宮か厳島神社かの精巧な模型を見たことがある。その精巧さには全く感嘆の外はなかつた。しか

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆39 藝
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年1月25日