「どくとくすり」じょ
「毒と薬」序

冒頭文

三四年前からいろいろに思ひ悩んだ記録の一つで感じ得たところのものを決してすつかり書き得たとは思はないが、断片的にも静観の心地には浸つてゐるつもりである。勿論この心地は容易に悟入することは出来ないもので、私などにしても、一進一退、纔(わず)かに寸を進めて尺を退くの愚を敢てする事の多いのを常に自ら憐んでゐるのである。しかし私に取つては、この記録は決して徒爾(とじ)ではなかつた。また偶然でもなかつた。行

文字遣い

新字旧仮名

初出

「毒と薬」耕文堂、1918(大正7)年11月5日

底本

  • 定本 花袋全集 第二十四巻
  • 臨川書店
  • 1995(平成7)年4月10日