(ななせんでバットをかって)
(七銭でバットを買つて)

冒頭文

七銭でバットを買つて、一銭でマッチを買つて、——ウレシイネ、僕は次の峠を越えるまでに、バットは一と箱で足りると思つた。山の中は暗くつて、顔には蜘蛛(くも)の巣が一杯かかつた。小さな月が出てゐるにはゐたが、それでも木の繁つた所は暗かつた。ア、バアバアバアバ、僕は赤ン坊の時したことを繰返した。誰も通るものはなかつた。暫くゆくと自転車を坂の下に落として、自分一人は草を掴(つか)めば上れるが、自転車を置い

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 中原中也詩集
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年12月10日改版