コキューのおもいで
コキューの憶ひ出

冒頭文

その夜私は、コンテで以て自我像を画いた 風の吹いてるお会式(ゑしき)の夜でした 打叩く太鼓の音は風に消え、 私の机の上ばかり、あかあかと明(あか)り、 女はどこで、何を話してゐたかは知る由もない 私の肖顔(にがほ)は、コンテに汚れ、 その上に雨でもバラつかうものなら、 まこと傑作な自我像は浮び、 軌(きし)りゆく、終夜電車は、 悲しみの余裕を奪ひ、 あかあかと、あかあかと私の画

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 中原中也詩集
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年12月10日改版