ひもの
干物

冒頭文

秋の日は、干物の匂ひがするよ 外苑の鋪道しろじろ、うちつづき、 千駄ヶ谷 森の梢のちろちろと 空を透かせて、われわれを 視守る 如し。 秋の日は、干物の匂ひがするよ 干物の、匂ひを嗅いで、うとうとと 秋蝉の鳴く声聞いて、われ睡(ねむ)る 人の世の、もの事すべて患(わづ)らはし 匂を嗅いで睡ります、ひとびとよ、 秋の日は、干物の匂ひがするよ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 中原中也詩集
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年12月10日改版