なつとひうん
夏と悲運

冒頭文

とど、俺としたことが、笑ひ出さずにやゐられない。思へば小学校の頃からだ。例へば夏休みも近づかうといふ暑い日に、唱歌教室で先生が、オルガン弾いてアーエーイーすると俺としたことが、笑ひ出さずにやゐられなかつた。格別、先生の口唇が、鼻腔が可笑(をか)しいといふのぢやない、起立して、先生の後(あと)から歌ふ生徒等が可笑しいといふのでもない、それどころか、俺は大体、此の世に笑ふべきものがあらうとは思つちやゐ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 中原中也詩集
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年12月10日改版