つかれやつれたうつくしいかお
疲れやつれた美しい顔

冒頭文

疲れやつれた美しい顔よ、私はおまへを愛す。さうあるべきがよかつたかも知れない多くの元気な顔たちの中に、私は容易におまへを見付ける。それはもう、疲れしぼみ、悔とさびしい微笑としか持つてはをらぬけれど、それは此の世の親しみのかずかずが、縺(もつ)れ合ひ、香となつて籠る壺なんだ。そこに此の世の喜びの話や悲しみの話は、彼のためには大きすぎる声で語られ、彼の瞳はうるみ、語り手は去つてゆく。彼が残るのは、十分

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 中原中也詩集
  • 角川文庫、角川書店
  • 1968(昭和43)年12月10日改版