こうじょうのまどより
工場の窓より

冒頭文

一 兄弟よ! もう眼を覚さなければならない。午前五時だ。起きて工場へ働きに行かねばならぬ。さうしないと人類は物資の欠乏に苦しむから。おとなしくわれ等は待たう。今までも待つたやうに。軈(やが)て資本家達も良心を眼覚すであらうから。 また兄弟よ。われ等も心の眼をもつとはつきり覚さうではないか。理想の光が天空一杯に輝いてゐるではないか、「愛」の波が悠久な姿で静かに工場の裾を洗つてゐるではないか。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 筑摩現代文学大系 36 葉山嘉樹集
  • 筑摩書房
  • 1979(昭和54)年2月25日