よめいりじたく
嫁入り支度

冒頭文

わたしは生涯に、たくさんの家を見てきた。大きいのも小さいのも、石造のも木造のも、古いのも新しいのも。がそのなかで、ある家のことが特にわたしの記憶に焼きついている。 もっともそれは、家というより、まあ小屋に近い。ちっぽけで、平家(ひらや)建てで、窓が三つついていて、まるで頭巾(ずきん)をかぶったセムシの小さな婆さんそっくりだった。外廻(そとまわ)りは白い漆喰(しっくい)ぬりで、瓦(かわら)

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • カシタンカ・ねむい 他七篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2008(平成20)年5月16日