はいかいし
俳諧師

冒頭文

一 明治二十四年三月塀和(はが)三藏は伊豫尋常中學校を卒業した。三藏は四年級迄忠實な學校科目の勉強家で試驗の成績に第一位を占める事が唯一の希望であつた。それがどういふものか此一年程前より試驗前の勉強は一切止めた。この卒業試驗前は近松の世話淨瑠璃を讀破した。試驗の答案は誰より早く出して殘つた時間は控室で早稻田文學と柵(しがらみ)草紙の沒理想論を反覆して精讀した。 三藏の父は竹刀を提(ひつさ)げ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「國民新聞」1908年(明治41)2月~9月

底本

  • 俳諧師・続俳諧師
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1952(昭和27)年8月25日