さんりょうきょう かさまつはかせのきかいなげかしゅじゅつ
三稜鏡 (笠松博士の奇怪な外科手術)

冒頭文

街頭はもう白熱していた。併(しか)し白い太陽は尚もじりじりとあらゆるものを照りつけ続けていた。そして路面からの反射光線は室内にまで火矢のように躍り込んでいた。捜査本部では、当事者達が一台の扇風機を囲んで、汗を拭きながら、捜査の方針を練っていた。 「首があると、被害の見当も、それで大体わかるのだが……」 刑事課長は溜息を吐(つ)くようにして言った。 「首はしかし、あの溝には、絶対に

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1932(昭和7)年11月号

底本

  • 「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌10
  • 光文社文庫、光文社
  • 2002(平成14)年2月20日