ナリンでんかへのかいそう
ナリン殿下への回想

冒頭文

一 昨年の八月中頃、ヒューゲッセン大使負傷事件を契機として我が国に対する英帝国の態度が、そろそろ敵意を帯びた奇怪なものに映り出していた頃であったと記憶している。何かの用件である日の夕方、ヴァローダ商会という印度商館へ訪ねて行ったことがある。電車通りに面した事務所には、相変らず所狭いまでに各種の器具機械類が並べられて、三人ばかりの日本商人が注文欲しげな顔で売り込みに控えていた。そして番頭のジョージ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋」1938(昭和13)年2月

底本

  • 橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇
  • 中央書院
  • 1995(平成7)年4月3日