あるひのこせん
或る日の小せん

冒頭文

今は故人になつてしまつたが、私の知つてゐる落語家先代の柳家小せんは、足腰が立たず、目が見えなくなつてからも、釈台を前に置いて高座を勤め、昔からある落語にもいろいろ自分で工夫をして、「芸」に磨きをかけることを忘れなかつた。 久保田万太郎、岡村柿紅、私などが肝煎(きもいり)となつて、「小せん会」と云ふものを作り、毎月一回何処(どこ)かの寄席で独演会をやつてゐたが、幸ひにいつも大入だつたのは、

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻29 落語
  • 作品社
  • 1993(平成5)年7月25日