一 彼はまたいつとなくだん〳〵と場末へ追ひ込まれてゐた。 四月の末であつた。空にはもや〳〵と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ〳〵櫻の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク〳〵啼きくさつてゐた。どこかで朝から晩まで地形ならしのヤートコセが始まつてゐた……。 彼は疲れて、青い顏をして、眼色は病んだ獸のやうに鈍く光つてゐる。不眠の夜が續く。ぢつとしてゐても動悸がひどく感じられ