こい

冒頭文

* そこの海岸のホテルでの話です。 彼女は女優でした。少しばかり年齢(とし)をとりすぎてしまいましたが、それでもいろいろな意味で最も評判のよい女優でした。 劇場が夏休みなので、泳ぎにたった一人で海岸へ来ていたのです。 ところが、ホテルのヴェランダで、ゆくりなくも誰とも知らない一人の青年を見初めてしまいました。——これは日頃の彼女にしてみれば非常に珍しいことで、し

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • アンドロギュノスの裔
  • 薔薇十字社
  • 1970(昭和45)年9月1日