ゆきおんな
雪をんな

冒頭文

一 『では誰か、雪をんなをほんとに見た者はあるか?』 いゝや、誰もない。しかし、 『私とこの父(とつ)さんは、山からの歸りに、橋向うの松原でたしかに見た。』『そんなら私とこの祖父さんなんか、幾度も〳〵見てる。』『いや私とこのお祖母さんは、この間の晩どこそこのお産へ行つた歸り、どこんとこの屋敷の前で、雪をんなが斯う……赤んぼを抱いて、細い聲して云つてたのを確かに聽いた。これつぱかしも嘘ではない。』

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「處女文壇 第一卷三號」1917(大正6)年7月1日

底本

  • 葛西善藏全集 第一卷
  • 津輕書房
  • 1974(昭和49)年12月20日