ぼくようしん
牧羊神

冒頭文

牧羊神 阜(をか)の上の森陰に直立(すぐだ)ちて 牧羊の神パアン笙(しやう)を吹く。 晝さがりの日暖かに、風も吹きやみぬ。 天(そら)青し、雲白し、野山(のやま)影短き 音(おと)無(なし)の世に、たゞ笙の聲、 ちよう、りよう、ふりよう、 ひうやりやに、ひやるろ、 あら、よい、ふりよう、るり、 ひよう、ふりよう、 蘆笛(あしぶえ)の管(くだ)の簧(した)、 震(ふる)ひ響

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「牧羊神」金尾文淵堂、1920(大正9)年10月5日

底本

  • 明治文學全集 31 上田敏集
  • 筑摩書房
  • 1966(昭和41)年4月10日