ふんにょうたん
糞尿譚

冒頭文

どこかでは既に雨が降っているのか、白く光って見あげるようにむくむくともりあがった入道雲の方向で、かすかな遠雷(えんらい)のとどろきがして居る。斜面を下りながら、彦太郎は、麦藁帽子(むぎわらぼうし)の縁に手をかけて空を見あげ、一雨来るかも知れんと思い、灼(や)けるように陽炎(かげろう)をあげている周囲を見わたすと、心なしか、さっと、一陣の冷たい風が来て西瓜(すいか)畑の葉を鳴らした。赭土(あかつち)

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 糞尿譚・河童曼陀羅(抄)
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2007(平成19)年6月10日